ネガティブな感情も思考も、湧き上がってくると自分がどんどん落ちていくのがわかるから、止めようとしますよね?それなのに止められないから、焦るし、止められない自分ごと責め始めてしまう。
でも、止められないのには、致し方ない理由があったんです。考えられる原因はいくつかありますが、ここでは一つ面白い実験の話をご紹介したいと思います。
止められない原因は…シロクマ!?
「シロクマ実験」というのを聞いたことありますか? 心理学者のダニエル・ウェグナーが行なった実験で、「シロクマのことを考えないように」と、制限をかけられた実験の参加者は、他の参加者よりも、シロクマを思い浮かべてしまいやすく、後になってからも、かえってシロクマのことを多く考えてしまう、という結果が出たのです。
「抑えよう」とすると、かえってそれに関することを頻繁に考えてしまう、抑制の逆説的効果と呼ばれています。
「じゃあどうしたらいいのか?」。積極的に他のことを考えたり、したりすることで切り替える方法もありますが、きっとこれを読んで下さっている方は、「ちゃんと向き合って解決したい」という想いが強いのではないでしょうか?だからこそ、つい考え続けてしまう。
そんなあなたには、より良く考えるためにも、考える前に、こちらをおすすめします。
「観察」で、見えてくる自覚していなかった想い
それは、「観察」することです。観察は、NVC(Non-violent Communication)と呼ばれるコミュニケーションのプロセスの、4つある要素の中の1つです。
NVCは、心理学者マーシャル・ローゼンバーグ博士が開発したコミュニケーションのプロセス。夫婦喧嘩から紛争地域での交渉まで、リアルで難しい局面で活かされていて、「人を思いやるコミュニケーション」とも呼ばれています。
“人を思いやる”と聞くと、誰かとのコミュニケーションを思い描きがちですが、この“人”の中に、あなた自身も含まれているんです。そう、「自分を思いやれるコミュニケーション」でもあるのが、NVCの凄みだと、私は感じています。
ローゼンバーグ博士が、NVCについて紹介した著書の中にも、こんな風に表現されています。
NVCがもっとも真価を発揮するのは、自分への思いやりを育てることかもしれない。
マーシャル・B・ローゼンバーグ著 NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法
ただ、実践するには慣れが必要なのが、正直なところです。たとえばご紹介した「観察」も少々難しいのです。ここで言う観察とは、自分の勝手な判断や評価を交えないで、ただ事実や状況をありのままに観察すること。
「これくらいの言葉に落ち込むなんて、なんて自分は弱いんだろう」は、評価です。「〇〇という言葉を受けて、落ち込んでいるんだな」は、観察。
人は、無意識に事実だけじゃなく、そこに自分の思い込みや、評価を加えて捉えてしまっているもの。ここを取り払って、事実をちゃんと見つめるというのは、意識していないとなかなかできません。
でも、この「観察」ができると…自分の感じている本当の感情に気づくことができるのです。
そして「〇〇という言葉を受けて、落ち込んでいるんだな」。と観察できたなら、傷ついた自分の心に気づけたなら、ようやく見えてくるのが、自分が必要としていたもの、「ニーズ」です。
「ニーズ」あなたが本当に求めていたものとは?
NVCでは、私たちには人として共通して持っているニーズがあると言います。たとえば、認めてもらうことや信頼されること。あたたかさや、貢献することなど。(出典元: NVC Japan HPより NVCの感情とニーズ)
ネガティブな感情は、このニーズが満たされないが故に湧き起こっているのです。だから、しっかりと「観察」ができると、自分自身の奥底にあった感情が掴めて、そこから、あなたが本当に求めていたニーズがわかるようになる。
そして、自分のニーズがわかると、「そのために何をどうしたらいいのか?」自分でも見えてくるようになる。
しっかりとご自身の気持ちを観察できたなら、その奥に、きっとあなたにとって大切なものを見つけられるはずです。
(その前に、ネガティブな感情に反応してしまう!という方はこちらのコラムをご参考に「ネガティブな感情との付き合い方」)
ネガティブなものに向き合うのは、勇気がいること。切り替える術も大切ですが、どうしても考えてしまうなら、「正しく向き合う術を手にすればいい」。
向き合おうとするあなたを応援しています。
余談ですが、実は、定期的に開催している「心を洗う自分との対話会」は、私自身が、価値観が真逆の夫との数々のバトルの末に、「自分の気持ちをどう掴めばいいのか?そこからどうニーズを掴むのか?」
実践に実践を重ね生まれたワークです。自覚するのが難しい感情やニーズを、いたずらに傷つける言葉を吐かず、感情を掴み、消化し、無事に相手に届く言葉で、必要なことをリクエストしていく。そのために、書き出すことで自分にとって必要なことを自覚していく。そのためのワークなのです。
だから相手にもやもやしたときも、自分にもやもやしたときも、不用意にこじらせた感情をぶつけて、相手も自分も痛めつけることなく、大切な想いやニーズを掴めます。
「観察は難しい、自分の感情が自分でも掴みにくい」そんな風に感じているあなたにぴったりのワークです。