なんだかもやもやしたり、イライラしたり。悲しい気もするし、怒っているような気もする。良い感じじゃないのは確かだけど…。そんななんとも言えない気持ちに、困ることはありませんか?
でも、これを知っておけば「随分消化しやすくなる」。そう実感している知識を、ウェルビーイングの学びからご紹介します。
ネガティブな感情が湧くのは生き延びるため!?
そもそも、ネガティブな感情が湧く理由をご存知ですか?それは、私たち人類の進化に関係があるようなんです。
私たちは、不快を感じるとそれを避けようとしますよね?
たとえば人間の祖先ホモ・サピエンスの時代。目の前に森が現れたとき、薄暗くて、怖いと感じると、「森の中には狼(敵)がいるかもしれない」となどと考えて、そこを避けるでしょう。
でも「森の中には、食べられるものがあるかもしれない」と希望や期待を持てば、その森に入っていきます。どちらの祖先の方が、生き残りやすかったと思いますか?
私達は、環境や捕食の危機を回避することが優れていなければ生き残れず、それによく適応した遺伝子を持ったまま、現在の生活を送っているのです。
「生きるスキル」に役立つ脳科学 生残り仕様から共存・現代仕様へ 駒野宏人著
遺伝子レベルでは、数万年前の祖先たちと変わっていない私たち。今の暮らしでは、命の危険は低くなっていても、脳は、相変わらず危険回避に役立つ、不快を感じる「不快脳」が優位になっているんです。
(参照:「生きるスキル」に役立つ脳科学 駒野宏人著)
だから、ネガティブな感情を抱えたり、その不快な感情に、つい意識が向くのも自然なことなんですよね。
祖先の時代には、危険を感じたら、避けたり、必要であれば戦ったり…。生死に関わる一方で、対処方法はシンプルでした。でも、今の私たちが抱えるネガティブ感情は、もっと複雑で、対処も簡単じゃあありません。
自分の気持ちの正体を掴めないと、消化できない
あなたにもこんなことありませんか?揉めて、相手に「謝って!」と怒ったのに、いざ相手から謝られると、「そんな言葉が聞きたかったわけじゃない!」とまた腹が立ったり。謝ってもらっても、自分の気持ちはまったく治らなかったり。
そう、自分で自分の感情をちゃんと掴めないと、相手にも伝えられないし、必要な対処もできないんですよね。
反対に、自分で自分の気持ちを掴めたら、相手にも気持ちを伝えやすくなる。だから、分かり合える可能性も高まる。
そして、たとえ相手と分かり合えなかったとしても、自分の気持ちを掴めたら、自分だけはわかってあげられる。自分への思いやり(セルフ・コンパッション)を発揮して、傷ついた自分の心を、あなた自身で癒してあげることも、できるんです。
そのためにも、自分で自分の気持ちを掴むことが大切。役立っている知識を、2つご紹介します。
自分の感情を掴むために知っておくこと
どんなに素晴らしい体験をしても、語彙力がないと、その感動を他の人とうまく分かち合えないのと同じように、感情を表現する言葉を十分に持っていないと、私たちは自分の感情を掴んたり、伝えたりすることができません。
それを教えてくれたのが、NVC(Non-violent Communication)と呼ばれるコミュニケーションのプロセスでした。
NVCは、心理学者マーシャル・ローゼンバーグ博士が開発したコミュニケーションのプロセス。夫婦喧嘩から紛争地域での交渉まで、リアルで難しい局面で活かされていて、「人を思いやるコミュニケーション」とも呼ばれています。
NVCでは、ネガティブな感情が湧くのは、自分が本当に必要としているもの(ニーズ)が満たされていないサインなのです。自分の感情をしっかり掴んで、表現できれば、ニーズ(愛や共感、理解など)を満たせる可能性が高まって、自分自身とも相手とも思いやりに溢れたコミュニケーションが実現できると考えられています。
感じている感情や感覚を表現しやすくする助けとして、NVCで用意されているリストをご紹介します。(出典元:NVC Japan HPより NVCの感情とニーズ)
たとえば、心の「痛み」を感じているときの表現は
・苦悩のある
・打ちひしがれる
・打ちのめされる
・深く悲しむ
・胸がつぶれる思い
・失恋(のような)
・傷ついた
・寂しい
・惨めな
・後悔した
文学的すぎる表現もありますが、心が痛いとき、それが「傷ついたからなのか?寂しくてなのか?」自分で掴めていれば、対処法も違ってきますよね?
二つ目の知識は、「感情には一次感情と二次感情がある」と知ったことです。
一次感情とは、人の持つ基本的な感情で、最初に本能的に現れる反応として出てくる感情です。たとえば、喜びや悲しみ、恐れなど。
それに対して、二次感情は、いくつかの一次感情が入り混じって生まれる感情のことで、怒りや恥、嫉妬などが挙げられます。
怒りの対処法としてよく知られている「アンガーマネジメント」では、怒りは二次感情として捉えていて、「最初に現れた一次感情が何か?」根っこにある感情を掴んで、表現できるようになると、怒りとうまく付き合えるようになる、とされています。
たとえば、大事な人に約束を急にキャンセルされたとします。「前から約束してたのに!」と怒りますが、その奥には、自分との約束よりも別の用事を優先させたことに、寂しさを感じていた。といった具合です。
この場合、怒りを相手にぶつけるより、「私は〇〇と感じて寂しかった」と伝えた方が、相手も受け取りやすいですよね。
一次感情と二次感情に挙げられる感情の種類は、提唱者によってさまざまなバリエーションがあります。NVCも、違うアプローチですが、私自身は、共通点を感じています。
それは、次々に湧き上がって、入り混じって変化していく不快で掴みにくい感情も、「その奥に隠されている本当の感情。求めているものを掴めれば、問題の解決につながっていく」と捉えられているところ。
私はこの2つの知識を得たことで、「今感じている気持ちは、本物じゃない?」「もっとその奥に大事な想いがあるかも、本当に求めているものは?」と、考えられるようになってきました。
すると、心の奥にあった自分の本音がわかった瞬間、それまで感じていたネガティブな気持ちがしゅわ〜っと消化されて、なんだか癒されたような、「そうだっだんだね」という気持ちになれた。そんな体験を何度もしています。
これまで感情の扱い方なんて、習ってきませんでしたよね。だから、どうしていいかわからなくなるのは、自然なこと。
でも、知れば、意識が変わる。私も日々練習中です。意識をして向き合ってみると、きっとあなたも変化を実感できるはずです。
ネガティブな感情に向き合おうとする、あなたを応援しています。
私自身は日常の中で実践していく中で、本当の感情をうまく掴むには、吐き出す時間も大事だと実感しました。吐き出すのは、先ほどの表現で言うと、二次感情にあたる感情です。
あなたにはありませんか?喧嘩の最中に散々きつい言葉を言い合ったあと、ようやくぼろっと、その奥にある大事な気持ちが出てきたこと。その反対に、「これを言うのは良くない」と気持ちを抑えている内に、自分がどうしたいかわからなくなったことは?
現実で気持ちを正面からぶつけられる相手は限られますし、わかる頃にはお互い傷だらけです。そこで、「無駄に傷つけあうことなく、その奥にある本当の想いを掴めたら!」と生まれたのが、「心を洗う自分との対話会」です。
ここでは、吐き出す部分を紙に書き出します。紙なので、誰も傷つきません。そうして吐き出して掴めた本当に大事な想いを、シンプルに相手に伝えることができる。よかったら、自分の気持ちを掴む練習場所として、お試しください。