ネガティブな感情の力って凄まじいですよね。怒り、イライラ、悲しみ、恥、不安、孤独など、どれも本当にパワフルで、ぶわ〜っと湧き上がってきたときには、自分がとんでもなくダメで、何もかもしっちゃかめっちゃかで、もうどうしようもなく思えます。
だからこそ、「切り替えた方がいい」「ポジティブに考えてみるのが大事」などと、頭ではわかっていても、心は「それどころじゃない!」という状態に。こうなると、やらないといけないことも手につかなくなってしまいます。
こんなときは、ネガティブな感情の海で、溺れかけているようなもの。息もまともにできないんだから、頭で考えて何かするなんてまず無理なんです。だからこそ、真っ先にする必要があるのが、自分を救出すること。その方法が…
セルフ・コンパッション 自分への思いやり
セルフ・コンパッションとは、誰かに向けるのと同じように、自分に思いやりを向けること。具体的な方法としては、痛みを感じている自分を自覚して、頭の中で優しい言葉をかけながら、自分をハグしたり、体をさすったりするのがおすすめです。
自分をハグする方法は、セルフ・コンパッションの実証研究の先駆者であるクリスティン・ネフ氏の著書「セルフ・コンパッション」有効性が実証された自分に優しくする力で、紹介されているエクササイズの一つです。
私たちは、誰かをケアするとき、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌されます。オキシトシンは、恐怖や不安を軽減し、ストレスと関係のあるコルチゾールの上昇を抑える効果がありますが、この「オキシトシン」は、自分で自分に触れることでも、出てくることがわかっているのです。
ネフ氏によると、研究では、セルフ・コンパッションをよく実践している人ほど、不安や抑うつ状態の程度が低い傾向がわかっています。
自己批判などの否定的な感情はパワフルで、穏やかな心と、まともな思考力を奪ってしまいがち。ですが、セルフ・コンパッションは、それを和らげて、落ち着いて向き合えるようにしてくれるのです。
私自身、何かあると自分を責めて、とんでもなくネガティブになっていく繰り返しでしたが、この方法と効果を知って、セルフ・コンパッションを実践するようになりました。その効果は、身をもって実感しています。
ネガティブな感情が湧き起こるのは抑えられませんが、しばらくすると、そんな自分の状況に気づいて、セルフ・コンパッションを実践。時間はかかっても、最後には自分なりに整理ができたり、その問題への解決策を見つけられたりできるようになってきています。
ネフ氏の著書では、このように紹介されています。
動揺した心をセルフ・コンパッションで鎮めれば、何が正しくて、何が間違っているのかに気づく力も高まるため、喜びが得られるものに向かって進むことができるようになる。
クリスティン・ネフ著 「セルフ・コンパッション」有効性が実証された自分に優しくする力
落ち着けたなら、自然とバランスよく捉え直せる
そう、私たちは焦ってすぐに起こったことへの解決策を考えようとしたり、ポジティブに捉え直してみようとしがち…。でも、心と頭が落ち着けたなら、自然とそこに向かっていけるんですよね。
だから、個人的な経験からも強くお伝えしたいのは、ショックを受けている最中に、無理やりポジティブに切り替えようとしたり、何か手を打とうとしない方が良いということ。
ひどく傷ついたり、怒っている最中に考えた解決策や、無理くり捻り出したポジティブな考え方は、やっぱりなかなかうまくいきません。何より、心の痛みや不満がずっと燻っていて、問題がぶり返すことも多い。
だから、まずはセルフ・コンパッションをおすすめしたいのです。そして、本当に気持ちが落ち着いて、ネガティブな感情が消化されたなら、その頃には、具体的にできることも見えてくるはず。
ここまできたら、最後に「何か今回のことに意味があったとしたら?」そう自分に問いかけてみると、心から無理なく、自分にとって良い、新しい捉え方(リフレーミング*)が、ふっと浮かんでくる。
そして、自分で見つけた新しい捉え方だからこそ、自然と行動もついてくる。
こんな良いサイクルが回るのが、セルフ・コンパッションの魅力の一つです。
*物事や状況を別の視点から捉え直すことを意味する心理学用語
ネガティブな感情が湧き上がるのは、その奥に守りたいものがあるから。そして、自分を責めてしまうのは、「誰かに責められる前に、自分で自分を責めて身を守ろう」とする、自衛的な行動と言われています。
どちらも自然なことだからこそ、防ぐことに躍起になるより、対処できるスキルがあればいい。
ネガティブな気持ちに振り回される現状から抜け出して、「向き合おう」としているあなたを応援しています。
ネガティブな感情に自分で向き合いたい方へのお役立ちコラム
「ネガティブな感情との付き合い方」